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Gorisseの研究では、両視点で自分の動きをアバターへ反映した。もしこの動作の対応も変えたら、視点の比較はどうなるだろう。Debarbaら(2017)は、視点と多感覚一致を組み合わせて調べた。多感覚一致と指標の読み方を使い、「どの条件の所有感が違ったか」まで説明する。
仮想の穴を使って脅威への反応を引き出す
参加者は、仮想の穴の上へ張り出した木の台に近づき、台の縁を足で感じる。原著の手順では、その後に仮想の床が落下して穴が現れ、穴の壁の文字を読むように下をのぞく。身体が落ちそうに見える脅威を提示するが、現実の足場を消す操作ではない。講義p30は一連の場面を紹介する図として読み、時系列の説明は原著の手順に合わせる。
この脅威の場面は、本人がどれだけ危険を感じたかと、身体にどんな反応が出たかを調べるために使う。講義p27は、身体への脅威を使う別の例として、仮想の手をハンマーでたたく場面も紹介する。それをこの穴の実験で行ったという意味ではない。
3PPのカメラは、頭部の後方120cmに置かれる。120cmは、この研究の配置条件である。全員に最適な距離や、身体所有感の得点を表す数値ではない。
視点と身体への対応を、別々の条件にする
視点は1PP、3PP、両者を切り替えられるALTの三条件。ALTはalternation、すなわち交替の条件だ。講義は1PPと3PPの比較を中心に扱うので、以下もこの二条件へ注目する。
もう一つの条件は、視覚・運動・触覚の対応である。VMTはvisual(視覚)、motor(運動)、tactile(触覚)を組み合わせた表記。¬VMTの¬は否定記号で、「VMTではない条件」と読む。
| 対応条件 | アバターの動き | 実物の台との接触 |
|---|---|---|
| VMT | 自分の動作を反映し、自分で動かす | 実物の縁を足で感じ、見える台と対応する |
| ¬VMT | 他の参加者の記録動作を再生し、自分では制御しない | 実物の台は使わない |
各対応条件の中で、1PPと3PPを比較する。VMTの1PPと¬VMTの3PPだけを比べると、視点と身体への対応が同時に変わるため、結果の差を視点だけへ帰属できない。
講義は¬VMTを「動画再生」と短く説明するが、原著では参加者の頭の回転がカメラの向きに反映される。アバターとカメラ位置は記録に従い、カメラの回転は自分で変えられる。すべての身体入力が止まった固定動画とは区別する。
感覚への回答と、発汗に伴う反応を測る
質問紙では、運動主体性、身体所有感、自己位置感覚、脅威に関する同意を別々に尋ねる。7段階の尺度で、−3は強い不同意、0は中立、+3は強い同意を表す。高い値の意味は、それぞれの質問の対象によって違う。
さらに、指の発汗に伴う皮膚の電気的な変化を測る。GSR(galvanic skin response:皮膚電気反応)は、こうした生理反応を調べる指標だ。この実験では、床が消える脅威に対する反応として読む。所有感そのものの点数を直接読み取る計器ではない。
結果は、条件を省かずに述べる
| 測ったもの | 1PPと3PPの結果の読み方 |
|---|---|
| 運動主体性・身体所有感:VMTの中で比較 | 明確な視点差を認めなかった |
| 運動主体性・身体所有感:¬VMTの中で比較 | 3PPの回答が1PPより低かった |
| 自己位置感覚・脅威への回答 | 1PPを支持する結果が示された |
| 脅威に伴うGSRの反応 | 1PPで3PPより大きかった |
VMTでは、3PPでも身体所有感への肯定的な回答が得られた。講義p27の「身体所有感は1PPで強くなる」という見出しだけでは、この条件による違いが消える。p34のVMT/¬VMTを確認すると、「感覚と動作が対応する場合の3PP」を別に読める。
脅威への回答が高いほどGSRも大きい、といった二つの測定値の結びつきを相関という。値が結びついていても、一方がもう一方の原因だとは限らない。この研究のGSRは脅威への回答と関連したが、身体所有感との有意な相関は示されていない。発汗の反応が大きかったという結果を、所有感の点数が同じだけ高かったと読み替えない。Debarbaらの原著の方法・結果に、対応条件、カメラ回転、質問とGSRの区別が記載されている。
講義p36は1PPで身体性・プレゼンスが総じて高い傾向をまとめる。ただし、同じ資料でも運動主体性には差がなく、所有感の結果には対応条件が関わる。要素・条件・指標を残すことで、傾向を普遍的な法則に変えずに説明できる。
二つの報告を読み直す
自作の理解確認: 「VMTの3PPと¬VMTの1PPで所有感が違った。これは視点だけの効果だ」「GSRが大きい人は、所有感が必ず強い」。この二つの報告を訂正しよう。
解答と根拠
前者では視点と多感覚一致が同時に変わっている。視点を調べるなら、VMTの中、または¬VMTの中で1PPと3PPを比べる。後者では、GSRを所有感の直接指標へ読み替えている。この研究のGSRは脅威反応を測り、所有感との有意な相関は示されなかった。本人への所有感の質問も別に読む。
根拠:第2回 PDF p27・28・29・30・31・32・33・34・35・36 出典の詳細
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