この節の目次
導入
仮想の部屋に入り込む体験と、現実の机を見ながらその上へ文字や図を重ねる体験では、現実の景色の扱いが違う。日常で長く使う装置を考えるには、何を表示するかだけでなく、現実の周囲をどう見るかが重要になる。
一言でいうと
AR(エーアール、Augmented Reality)とは、現実の環境に計算機で作った情報を重ねる拡張現実のこと。 XR(エックスアール)はVRやARなどをまとめて扱う呼び方。VRは仮想の環境の体験に、ARは現実への情報の追加に注目する。装置の見た目だけで両者を決めない。
なぜ必要か
現実の人や机を見ながら情報を使う場面では、外界が見える表示が役立つ。講義は、重さ、鼻への負担、蒸れ、電池、眼鏡との併用などを現状の課題として挙げる。日常装着には軽量性、装着性、長時間の使用が必要で、映像性能だけを改善すれば済むわけではない。
小さい具体例
現実の机へ「ここに置く」と文字を重ねる場合を考える。透明な眼鏡越しに机からの光を直接見ながら文字を加える方法と、カメラが撮った机の映像へ文字を加えて表示する方法がある。結果として机が見えていても、机から眼までの経路は違う。
外が見えても、眼までの経路は違う
外界の光を直接見る
光学シースルー
撮影した映像を見る
ビデオシースルー
透明な光学系を通る光か、カメラが撮った画面の像か。
仕組み
光学シースルーは、透過する光学系を通して現実の外界からの光を直接見る方式。ビデオシースルー(パススルー)は、カメラで外界を撮影し、その映像を表示して見る方式だ。「シースルー」は外界を見ることに注目した語で、二つの方式を区別して使う。
| 観点 | 光学シースルー | ビデオシースルー |
|---|---|---|
| 外界の経路 | 外界の光を直接眼へ | カメラで撮影し画面へ |
| 机の見え方 | 光学系を透過して見る | 机の撮影映像を見る |
| 考える課題の例 | 外界と重ねる像の光学的な調整 | 撮影・処理・表示の遅延 |
資料40ページは光学シースルーの説明とVision Proの写真を同じページに置いている。ただしAppleの説明では、Vision Proの外界表示はカメラの映像を用いるパススルーだ。教材では方式の定義と製品例を分離する。これを「写真があるから光学シースルー」と覚えないようにする。
資料37〜39ページの『電脳コイル』は、常時装着の未来を考えるための作品例。作中の描写を実際の製品の能力の証拠にはしない。講義の問いを引き継ぎ、「長く着けても負担が少ない」「現実の活動を妨げにくい」「必要な情報へアクセスできる」という条件で未来の装置を考えてみよう。
よくある誤解
なぜ起きるか: 装着したまま現実の景色が見える点は二方式に共通する。
NG: 外が見える装置は、すべて透明なレンズ越しに直接見ている。
正しい見方: 外界の光を直接見るのか、カメラの映像を見るのか、経路で区別する。
説明できる形
「体験の目的 → 外界を見る経路 → 日常装着の条件」の順に述べる。
説明例: ARは現実の環境へ情報を重ねる体験である。外界を見る方式には、現実の光を直接見る光学シースルーと、カメラ映像を表示するビデオシースルーがある。日常的に使う装置では表示方式だけでなく、軽量性、装着性、長時間使用などの条件も重要になる。
確かめよう
外部カメラが撮った部屋の映像を内部の画面に表示している。その部屋は見えるが、この方式は光学シースルーと言えるだろうか。光の経路を一文で説明しよう。
根拠:第1回 PDF p35・37・38・39・40・41 出典の詳細
補足:Vision Proの外界表示はカメラ映像
資料p40は光学シースルーの説明と製品写真を同じページに置く。Appleの説明ではVision Proの外界表示にカメラのリアルタイム映像を使う。教材は光学シースルーとビデオシースルーを分けて説明する。
この節を読んだあと、自分の言葉で説明できた?
記録はこのブラウザだけに保存。理解の自動判定ではない。