第1章 / 01 · 11節
VRは何を再現するのか
この節の目次
導入
映画の中に入って、顔を右へ向けたら右側の景色が見える。前へ歩くと、遠くにあったものへ近づける。こうした「自分の行動に合わせて世界を体験する」仕組みが、今回学ぶVRの入口になる。きれいな映像を見せるだけでなく、人の身体と映像をどう結び付けるかに注目しよう。
一言でいうと
VR(ブイアール)とは、計算機で作った環境を、そこにいるように体験させる技術。 Virtual Realityの略で、日本語ではバーチャル・リアリティという。ここでの「仮想」は架空の物語だけを意味しない。現実の部屋や作業を再現した環境も扱える。
なぜ必要か
実際には危険な場所、遠く離れた場所、まだ建設されていない部屋でも、見る・動く・操作する体験を作れる。講義の目標は装置の知識だけでなく、その環境で人がどう感じ、どう行動するかを理解・評価することにある。装置の性能と人の感覚を一緒に考える科目だ。
小さい具体例
仮想の部屋の中央に赤い箱があるとする。固定された箱の写真を見る場合、顔を動かしても写真そのものは変わらない。一方、頭の動きに応じて映像を更新する場合、箱は部屋の同じ位置にあるまま、こちらから見える側面が変わる。「箱の絵を表示する」ことと「箱がある空間を体験する」ことの違いがここにある。
四つの特徴は、四つの問いで考える
装置名より、体験の仕組みを見る一人称視点
どこから見る?
本人の眼に相当する位置
三次元性
奥行きはどう分かる?
左右の像など、奥行きの手掛かり
身体性
動いたらどうなる?
頭の位置・姿勢を見え方へ反映
リアルタイム性
いつ反映される?
動きに応じて素早く更新
仕組み
この第1回では、VRを考える四つの特徴として一人称視点・三次元性・身体性・リアルタイム性を扱う。一人称視点は自分の眼の位置から見ること。三次元性は奥行きのある空間として見ること。身体性は身体の動きと体験が結び付くこと。リアルタイム性は動きに応じた変化がすぐ表示されることだ。各特徴の実現方法を、次の節から順に確かめる。
HMD(エイチエムディー、Head-Mounted Display)は、頭に装着する表示装置のこと。講義では1968年のSutherlandの装置から現在のゴーグルまでを比較する。昔の装置は線で形を描く表示でも、頭の動きに合わせた視点更新を目指していた。進歩を考える際は「絵が精細になった」だけでなく、表示・計測・計算がどう改善したかを見る。
CAVE(ケイブ)は、壁などに映像を投影する部屋型の体験環境。講義はゴーグル型とCAVEを二つの流れとして紹介している。CAVEでは周囲の面を表示に使うので、「頭に表示装置を着ける方法だけがVR」と限定しないことが大切だ。1995年のVirtual Boyは両眼に異なる映像を与える例として登場するが、立体表示があることと四つの特徴がすべて実現されることは分けて考える。
よくある誤解
なぜ起きるか: VRの紹介ではゴーグルの写真が目立つ。
NG: ゴーグルをかけさえすれば、身体の動きに反応するVRになる。
正しい見方: 表示装置に加え、身体の動きを計測し、その動きに応じて環境を更新する仕組みを確かめる。
説明できる形
「装置の名前 → 四つの特徴 → 行動と映像の関係」の順に説明すると、部品の列挙で終わらない。
説明例: VRは、計算機で構成した環境をそこにいるように体験させる技術である。本講義では一人称視点、三次元性、身体性、リアルタイム性に注目する。例えば頭の向きを計測して表示する視点を更新すると、身体の動きに応じた空間の見え方を実現できる。
確かめよう
箱の映像が非常に精細でも、顔を右へ向けて景色が変わらなければ、四つの特徴のうち何が十分ではないだろう。写真の精細さと、身体に応じた表示更新を分けて答えてみよう。
根拠:第1回 PDF p3・4・10・11・13・14・15・32・33 出典の詳細
この節を読んだあと、自分の言葉で説明できた?
記録はこのブラウザだけに保存。理解の自動判定ではない。