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導入
右を向いたのに、映像が少し後から右向きの景色へ変わる。映像の解像度が高くても、このずれが大きいと身体の動きと見え方が合わない。リアルタイム性では、画面の更新回数だけでなく、動きが映像へ反映されるまでの経路を考える。
一言でいうと
遅延(ちえん、Latency)とは、ある出来事からそれに対応する結果が出るまでの時間差。 ここでは頭の動きから対応する映像が表示されるまでを考える。更新周期は画面を更新する間隔、更新周波数は1秒間の更新回数だ。周波数の単位Hz(ヘルツ)は1秒当たりの回数、ms(ミリ秒)は1秒の1,000分の1。
なぜ必要か
頭の動きと映像の変化が結び付いて初めて、周囲に仮想空間があるような体験を作れる。動きを計測してから表示するまでに時間が掛かるため、遅れをどこで減らせるかを判断する必要がある。映像更新の速さだけで、計測や計算の遅れまで消えたとは言えない。
小さい具体例
120Hzで更新する画面は、1秒間に120回更新する。1回の間隔は1/120秒で、ミリ秒なら1,000/120≒8.33ms。これが更新周期だ。頭の計測が3ms、画像の計算が6ms、描画・表示が8msという簡単な直列モデルなら、合計は17msになる。8.33msと17msは別の量を求めている。
17msと8.33msは、別の時間を測っている
頭の動きを測る
3ms画像を作る
6ms画面へ出す
8ms3 + 6 + 8 = 17 ms
1,000 ÷ 120 ≈ 8.33 ms
仕組み
講義では体感される遅延を、頭部運動の計測、画像計算、画像描画の遅延の和として近似する。この説明での画像描画は画像を画面へ出す工程。実機では処理が並行して進む場合や、表示の待ち時間などもあるため、和は仕組みを理解するための簡略モデルとして扱う。今回の計算演習では、問題文で直列モデルを指定する。
更新周期:T(ms)=1,000/f(Hz)
簡略モデルの合計遅延:L=計測の遅れ+画像計算の遅れ+描画・表示の遅れ
資料の120Hzや20ms程度という数値は、講義で示した装置・条件の例。すべてのVR装置が常にその値になるわけではない。VR酔いについても、資料は原因が研究中とする。遅延が一つの検討要因であることと、「原因は遅延だけだ」と断定することを区別する。
よくある誤解
なぜ起きるか: 高い更新周波数は動きが滑らかになる印象を与える。
NG: 120Hzなら、頭の動きから表示までの遅延は必ず8.33msだ。
正しい見方: 8.33msは更新周期。動きの計測や画像計算などを含む合計遅延は別に評価する。
説明できる形
「何の開始と終了を測るか → 処理の段階 → 周期との違い」の順に述べる。
説明例: 頭部運動から映像表示までの遅延には、運動の計測、画像計算、描画・表示に掛かる時間が関係する。更新周期は画面を更新する間隔なので、この合計遅延とは異なる。したがって、更新周波数を高くしただけで、計測や計算に由来する遅れがすべてなくなるとは言えない。
確かめよう
計測5ms、計算4ms、描画・表示6msの直列モデルで合計を求めよう。さらに描画・表示だけを3msへ改善したとき、合計が何ms変わるかを計算しよう。自分で答えてから、次の答えと照合しよう。
確認用の答え: 改善前は5+4+6=15ms。改善後は5+4+3=12msなので、15−12=3ms短くなる。計測と計算の時間は残る。
根拠:第1回 PDF p27・28・29・30 出典の詳細
補足:講義の数値は装置・条件の例
資料p29–30の120Hzと20ms程度は講義の例。更新周期と頭部運動から表示までの遅延は測る量が違う。引用研究も実験環境と装置の評価なので、現在の全VR機器の一定値として扱わない。
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