この節の目次
導入
椅子に座ったまま右を向くことと、右へ一歩移動することは違う動きだ。前者では主に向きが変わり、後者では場所が変わる。頭の動きに合わせてVRの見え方を作るには、この二種類の変化を区別して計測しなければならない。
一言でいうと
ヘッドトラッキングとは、頭の位置や姿勢を継続して計測・推定すること。 位置は「どこにあるか」、姿勢は「どちらを向いているか」。6自由度(ろくじゆうど、6DoF)は、三方向の移動と三方向の回転を合わせた六つの独立した動きの成分を指す。DoFはDegrees of Freedomの略。
なぜ必要か
頭の向きだけが分かっても、顔を横へ動かして物の裏をのぞく変化は十分に再現できない。位置も分かれば、仮想の眼の場所を移動させられる。身体の動きと仮想空間の変化が結び付くことを、この講義では身体性の具体例として学ぶ。
小さい具体例
正面の箱に対して、同じ場所で右を向くのは回転。右へ一歩ずれるのは移動。箱の裏をのぞくには移動した位置から描き直す必要がある。「右」という言葉が共通でも、向きと位置は別に更新する。さらに、うなずく動きと首を左右に傾ける動きも、異なる回転だ。
位置の3成分 + 姿勢の3成分
場所が変わる
↑ 上下 ↓ / 前後前後・左右・上下の3成分。
向きが変わる
首をかしげる
うなずく
左右を向く
ロール・ピッチ・ヨーの3成分。
向きだけでは、歩いた先の位置は分からない。
仕組み
ここでは前後・左右・上下を三方向の移動として考える。回転にはロール(前後方向の軸を中心に左右へ傾く)、ピッチ(左右方向の軸を中心に上下を向く)、ヨー(上下方向の軸を中心に左右を向く)がある。頭で考えるなら、ロールは首をかしげる、ピッチはうなずく、ヨーは首を左右へ振る動きが目安になる。X・Y・Zのどれを前方向にするかは座標系によるので、文字だけで回転軸を決め付けない。
| 成分 | 小さい動作例 | 変わるもの |
|---|---|---|
| 前後・左右・上下 | 一歩前へ、横へ、しゃがむ | 位置 |
| ロール | 首を左右にかしげる | 姿勢 |
| ピッチ | 上を向く、下を向く | 姿勢 |
| ヨー | 右を向く、左を向く | 姿勢 |
講義の初期装置では、頭側の三個の超音波発信機と天井側の四個の受信機を使う計測が紹介される。超音波は人の耳に聞こえる範囲より高い周波数の音。音が届くまでの時間から距離を求め、複数の距離を組み合わせて頭の動きを計算する。これは飛行時間(Time of Flight)を使った計測の例だ。数の組合せは講義の装置の説明として覚え、あらゆる6DoF装置の必要条件へ一般化しない。
よくある誤解
なぜ起きるか: 頭を動かすと映像が変わるので、どの成分を計測したかを見落としやすい。
NG: 三方向の回転が分かれば、頭の移動位置も分かる。
正しい見方: 回転は姿勢の変化、移動は位置の変化。6DoFでは両方の成分を扱う。
説明できる形
「位置の3成分 → 姿勢の3成分 → 表示の更新」の順で述べる。
説明例: 6自由度は三方向の移動と三方向の回転を合わせたものだ。ヘッドトラッキングで頭の位置と姿勢を推定し、仮想の視点へ反映することで、歩行や頭の回転に応じた見え方を作れる。回転だけを計測する場合と比べ、移動して対象をのぞき込むような変化も扱える。
確かめよう
同じ場所でうなずく動きと、まっすぐしゃがむ動きは、どちらも視線が下へ移ったように見えることがある。それぞれ位置と姿勢のどちらが主に変化したかを説明しよう。
根拠:第1回 PDF p23・24・25・26 出典の詳細
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