この節の目次
導入
指を顔の前へ立てて、左眼と右眼を交互に閉じると、背景に対する指の位置が違って見える。両眼は少し離れた場所にあるので、同じ対象を見る角度がわずかに違う。この違いを映像で作ると、平らな表示装置でも奥行きの手掛かりを与えられる。
一言でいうと
両眼立体視(りょうがんりったいし)とは、左右の眼が受け取る映像の違いを手掛かりに奥行きを感じること。 その違いのうち、両眼で対応する像の位置のずれを両眼視差(りょうがんしさ)という。単に異なる写真を二枚用意すればよいのではなく、同じ空間を左右の眼の位置から見た対応する映像が必要だ。
なぜ必要か
VRの三次元性を実現する一つの方法になる。左右の眼へ同じ映像を送るだけでは、左右の眼の位置の違いに対応した視差は作れない。左眼用映像と右眼用映像をどう作り、どう分離して届けるかが表示技術の中心になる。
小さい具体例
机の手前に小さな箱、奥に壁がある場面を考える。左眼の位置から箱を見た画像と、右眼の位置から見た画像では、壁を基準にした箱の位置が少しずれる。二つの画像を対応する眼へ届けると、そのずれが奥行きの手掛かりになる。目の前の指と遠い壁を比べる例なら、「違う映像」の意味を自分の経験から説明できる。
背景に対して、箱の位置がずれる
同じ箱、少し違う位置
箱は背景の基準線より右へ
同じ箱、少し違う位置
箱は背景の基準線より左へ
同じ物体の対応する像のずれを、奥行きの手掛かりにする。
仕組み
まず左右の眼に相当する二つの視点を用意する。同じ仮想の箱を、それぞれの視点から描く。そのあと、左の画像は左眼へ、右の画像は右眼へ届くよう表示する。左右の分離には、HMDの左右の表示、液晶シャッターによる時間の切り替え、裸眼立体視による光の進行方向の分離などがある。次の二節で後二者を比べる。
講義では1968年の装置がワイヤフレームを使ったことも紹介される。これは物体の形を主に線で描く表現で、面の色や質感を作り込んだ現在のCG(Computer Graphics、計算機による画像表現)とは見た目が異なる。表示には二台のCRT(Cathode-Ray Tube、ブラウン管)が使われた。重要なのは、線だけの箱でも、左右の視点に対応する描き方をすれば奥行きの手掛かりを作れるという点だ。
よくある誤解
なぜ起きるか: 三次元のCGと、両眼に映像を送る立体表示はどちらも「3D」と呼ばれる。
NG: 3Dモデルを描けば、左右の眼へ自動的に違う映像が届く。
正しい見方: 形を三次元で計算することと、左右の眼へ対応する映像を分離して送ることは別の工程だ。
説明できる形
「眼の位置の違い → 左右の像の違い → 表示での再現」の順に述べる。
説明例: 左右の眼は異なる位置にあるため、同じ物体でも対応する像の位置がずれる。この両眼視差を奥行きの手掛かりにするのが両眼立体視である。VRでは左右の眼の位置に対応する映像を計算し、それぞれの眼へ分離して届けることで、この手掛かりを再現する。
確かめよう
左右の眼へ同じ映像を送った場合、「奥行きが絶対に一切分からない」とまで言えるだろうか。両眼視差の手掛かりがないことと、絵の遠近など他の手掛かりまでなくなることを区別しよう。
根拠:第1回 PDF p20・21・22 出典の詳細
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